一般社団法人での診療所開設手続き

医療法人ではなく一般社団法人で診療所を開設する理由についてヒアリングさせて頂き、適切に準備を行います。
都道府県の認可が不要である分、保健所との初回対応が非常に重要になります。
一般社団法人での診療所開設を検討されている方はお早めにご相談ください。

一般社団法人による
診療所開設手続きの流れ

一般社団法人を設立し、医療機関(診療所)を開設するケースは年々増加しています。営利を目的としない柔軟な運営形態でありながら、医療機関としての社会的信用も得られる点が多くの医師・事業者から注目されている理由です。一般社団法人による診療所開設の一般的な流れについて、わかりやすく解説します。

  1. 01

    診療所開設の目的と事業計画の整理

    まず「なぜ一般社団法人で診療所を開設するのか」という目的を明確にし、医療理念や将来的な展望を含めた事業計画を整理します。非営利性や地域貢献、特定医療ニーズへの対応などを柱にした計画が求められます。

  2. 02

    定款作成と法人設立の準備

    診療所運営を前提とした法人定款を設計します。定款には「医療法に基づく医療機関の開設」が含まれる必要があります。目的欄に「医療法に基づく診療所の開設及び運営」などの文言を明記。理事会設置法人とするのが一般的です。

  3. 03

    一般社団法人の設立登記

    設立発起人2名以上で設立総会を開催し、必要書類を法務局に提出して法人登記を行います。設立後に法人格が得られ、法人名義での契約や銀行口座開設が可能になります。

  4. 04

    医師との契約・雇用関係の明確化

    法人が雇用または委任契約により医師と関係を結ぶ必要があります。医療法上、管理者(院長)は医師でなければなりません。医師との契約形態が「名義貸し」と誤解されないよう、明確な業務実態と報酬体系を設計することが重要です。

  5. 05

    開設予定地の選定と物件契約

    診療所を開設する場所を選び、テナントや土地・建物の契約を法人名義で行います。開設許可申請時には、図面や構造、設備などの詳細が必要になるため、医療機関向け設計の専門家との連携が望まれます。

  6. 06

    開設許可申請書類の準備

    都道府県(政令市)の保健所に対し、開設許可申請書を提出します。診療所の構造、設備、管理体制など詳細な資料が必要です。一般社団法人が開設主体となる場合、法人登記簿謄本、定款、役員名簿、議事録なども提出資料に含まれます。

  7. 07

    保健所・行政との事前相談

    許可申請前に、保健所や都道府県の医務課と事前に相談を行い、必要な要件を確認します。行政との認識ずれを防ぐため、早い段階での事前相談が推奨されます。非営利性や医師の雇用関係について特に確認が必要です。

  8. 08

    開設許可申請の提出

    必要書類を整え、正式に開設許可申請を提出します。受理されると調査日程が調整されます。不備があると差し戻されることもあるため、事前相談での指摘を確実に反映させたうえで提出することが重要です。

  9. 09

    現地調査(構造設備の確認)

    保健所による現地調査が行われ、構造・設備・管理体制が法令基準に適合しているか確認されます。調査項目は厳格であり、診察室の面積、導線、衛生設備など細部にわたるため、事前のチェックが欠かせません。

  10. 10

    許可証の交付・診療所の開設届出

    開設許可が下りると、診療所開設届を改めて提出し、開設日が確定されます。この時点で診療所としての運営が可能となります。医師会への加入や地域連携の体制づくりも進めていきます。

  11. 11

    保険医療機関指定申請

    診療報酬請求のため、社会保険診療報酬支払基金へ保険医療機関としての指定申請を行います。保険診療を行うにはこの手続きが必須です。審査に数週間を要することがあるため、早めの申請が推奨されます。

  12. 12

    開業・運営開始

    医師・スタッフの確保、システム導入、広報などを経て、いよいよ開業を迎えます。開業後も法人としての会計・税務・労務管理、医療法上の届出などが必要です。継続的な管理体制が求められます。

注意すべき法的・制度的ポイント

非営利性の担保

一般社団法人が医療機関を開設する場合、法人が“営利を目的としていない”ことが制度上求められます。配当が禁止され、利益はすべて事業目的に再投資されるべきものです。

名義貸しとの区別

一般社団法人が「実態のない器」であり、実際には医師個人の経営であると判断されれば「名義貸し」と見なされ、医療法違反に問われる可能性があります。

地域医療計画との整合性

地域によっては新規開設の調整が必要な場合もあり、地域医療構想と整合した形での開設が望まれます。

まとめ

一般社団法人による診療所開設は、営利を目的としない柔軟な形態である一方、法制度上の要件や行政からのチェックも厳密です。早期からの専門家(行政書士、医療コンサルタント、税理士など)との連携が成功の鍵となります。適切な手順を踏むことで、地域に根ざした持続可能な医療提供体制の構築が可能となるでしょう。