メリットのないMS法人が設立されていた事例

2025年7月24日

はじめに

多くの医師の先生、歯科医師の先生とお会いしてきましたが、先生方が所属するご友人グループの中には都市伝説的な情報を発信してしまう方もいます。MS 法人ひとつとってもそれは存在しています。「MS 法人神話」というものが存在し「MS 法人は必ずメリットが出る」と信じて疑わない方もいますが、それは検討した上で設立まで進んで欲しいものです。また、いたずらに設立された MS 法人について、専門家の私たちの目を通した時には税理士の税務顧問料の上乗せのためであったり、銀行が融資をしたいがための設立提案だったりするので、本当に医療機関目線に沿った提案になっていないものもあります。このことから、医療機関としても正しい情報を得ることに努めなければなりません。また、医師、歯科医師の先生方も「先輩医師がこう言っていた」「セミナーでこう聞いた」というアドバイスに加えて、それが自院が当てはまる情報なのかという見極めも必要になってきます。
医療機関が税理士に言われるがまま MS 法人を設立してしまっているケースも多く、本来は正しい説明を受けて設立に踏み出すべきです。税理士との打ち合わせを密に行い MS法人設立が本当に自院にとってメリットがあるのか、やりたいことが実現できるのか、納得するまで検討を重ねるべきです。

①MS 法人設立のメリット・デメリット

メリット

1業務委託費等により業務分散や、所得分散が可能となる
2医療法人では行えない事業を行うことができる
3不動産譲渡等による相続税対策が可能となる
4利益の配当が可能 等

デメリット

1事業税の発生
2法人運営費用の増加
3従業員等関係者への説明 等

先述した「MS 法人神話」でよく言われるのは、節税効果が高いという情報です。実際には医療法人の事務運営などを MS 法人に委託し、業務委託費等で医療法人と MS 法人とで所得分散が行われるケースはあります。ただし、MS 法人設立そのものが節税効果があると誤認している場面にもしばしば出くわすので、今回は実際簡易的にシミュレーションを行いメリットが出るかどうか確かめていくこととします。

②MS 法人設立のシミュレーション

例)【医療法人単体】消費税簡易課税 自費率 10%

収入300,000,000 円
所得50,000,000 円
法人税等16,000,000 円
消費税1,500,000 円
納税額計17,500,000 円

例)【MS 法人単体】消費税簡易課税

収入300,000,000 円
所得3,000,000 円
法人税等800,000 円
消費税1,500,000 円
納税額計2,300,000 円
医療法人+MS 法人納税額計19,800,000 円

例)【医療法人のみ(医療法人+MS 法人合算)】

(業務委託費 30,000,000 円、消費税簡易課税、自費率 10%)

収入300,000,000 円
所得53,000,000 円
法人税等17,250,000 円
消費税1,500,000 円
納税額計18,750,000 円

納税の差としては 医療法人単体+MS 法人単体 の納税額の方が医療法人のみの納税額を 1,050,000 円上回る結果となり、節税目的であれば本件は医療法人単体で運営した方が納税額は小さくなる、という結果となります。理由として MS 法人に消費税がかかってきてしまうことと、医療法人では事業税の軽減規定が適用されるためです。あくまで一例ではありますが、MS 法人を設立したことがそのまま税メリットにつながるとは考えてはなりません。もちろん上述したメリット1のように親族が MS 法人の役員に就任することによる所得分散効果を図る方法であったり、また、税メリットではなくメリット2に記載したような医療法人では運営できない事業を行うために MS 法人を設立する、ということも通常考えられるので、MS 法人設立を否定するものではないことを申し添えておきます。
下記に示すのは税理士と医療機関との間で十分な説明が行われなかったことにより、MS法人設立後トラブルになった事例を紹介していきます。医療機関の皆様におかれましては、納得いくまで税理士と打ち合わせを重ねることを強くお勧めします。

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