【2025年度版】診療所のための「外来・在宅ベースアップ評価料」完全ガイド

2025年12月8日


【2025年度版】診療所のための
外来・在宅ベースアップ評価料ガイド

本記事では、2024年度(令和6年度)診療報酬改定で新設され、2025年現在も導入が進む「外来・在宅ベースアップ評価料」について、 算定要件・点数・導入手順・対象職員・注意点をまとめます。
人件費の高騰や人材確保にお悩みの「無床診療所(医科・歯科)」の院長・事務長様向けに、実務で使える形で整理しています。

結論:ベースアップ評価料は、評価料収入を原資として職員の基本給等を引き上げる制度です。
ポイントは ①届出②賃金改善(基本給等)③職員への周知 です。

監修・執筆者について

本記事は、医療機関の税務・労務・診療報酬対応を横断的に支援する 税理士法人総合経営サービス(医業支援)が、実務での届出・運用支援の経験を踏まえて作成しています。 制度運用は地域・個別状況で扱いが変わる場合があるため、最終判断は最新の通知・要領等をご確認ください。

1. 外来・在宅ベースアップ評価料とは?

外来・在宅ベースアップ評価料は、診療所で働くスタッフの賃金水準(基本給等)を引き上げることを目的に設けられた評価項目です。

最大の特徴は、「評価料によって得られた収入の全額を、職員の給与改善(ベースアップ)に充てることが義務付けられている」点です。

つまり、診療所にとっては原則として制度の収入を原資に賃上げを実行する設計であり、人材確保・定着の観点から重要性が高い制度です。

2. 「評価料(I)」と「評価料(II)」の違い

診療所が算定する評価料には2つの区分があります。無床診療所は原則として(I)を算定し、 (I)だけでは賃上げ目標に届かない場合に(II)の上乗せを検討します。

区分概要主な対象
評価料(I)一律の算定額で、主に医療従事者の賃金改善を評価するもの原則すべての無床診療所
評価料(II)(I)だけでは賃金増率が1.2%に達しない場合の追加評価賃金改善が必要な一部の診療所

3. 外来・在宅ベースアップ評価料(I)の点数と算定要件

3-1. 算定点数(医科・歯科共通)

評価料(I)は、初診・再診や訪問診療を行った際に、以下の点数を加算します。

  • 初診時:6点
  • 再診時等:2点
  • 訪問診療時(同一建物居住者以外):28点
  • 訪問診療時(上記以外):7点

3-2. 主な算定要件

  • 診療所全体の賃金改善額が、評価料の算定によって見込まれる収入額を上回ること。
  • 職員の賃金改善計画を策定し、地方厚生局等に届け出ること。
  • 算定内容(賃金改善の実施等)について職員へ周知すること。

重要:本制度は「算定して終わり」ではなく、届出 → 算定 → 周知 → 賃金改善 → 実績報告までがセットです。

4. 導入から賃上げ実施までの5ステップ

診療所が本制度を活用するまでの実務フローは以下の通りです。

Step 1. 賃金改善計画の策定評価料収入の見込み額を計算し、誰の給与をいくら上げるか(基本給等)を決めます。

Step 2. 届出作成した計画書を地方厚生局へ提出します。

Step 3. 算定開始と周知届出受理後に算定を開始します。院内掲示やHP等で患者様への周知が必要です。

Step 4. 賃金の改善(ベースアップ)評価料収入を原資として、職員の給与(基本給等)を引き上げます。

Step 5. 実績報告賃金改善の実績を、毎年8月に地方厚生局へ報告します。

5. 対象職員と「ベースアップ」の正しい定義

5-1. 対象となる職員は誰ですか?

※医師・歯科医師は対象外です。

  • 事務職員:専ら事務のみを行う者は対象外ですが、受付や会計など患者様と直接接する職員は対象となります。
  • 看護師、准看護師、看護補助者
  • 歯科衛生士、歯科助手
  • 薬剤師、管理栄養士、リハビリ職(PT/OT/ST)等

5-2. ベースアップの定義は?賞与でも良いですか?

この制度では、基本給や毎月決まって支払われる手当(手当の引上げ)による改善が求められます。

  • × NG:賞与(ボーナス)や一時金による支給
  • ○ OK:基本給のアップ、ベースアップ手当の新設・増額

6. 実務でよくある注意点・失敗例

届出・算定の実務では、次のポイントでつまずくケースが多いです。

  • 見込み収入を楽観的に見積もる:算定実績の変動を考慮せずに計画すると、賃金改善額との整合が取れなくなるリスクがあります。
  • 賞与で対応しようとしてしまう:制度上は基本給等での引上げが前提です。
  • 周知が弱く職員トラブルになる:説明不足が不信につながりやすいため、院内説明・掲示・規程整備をセットで検討します。
  • 規程・就業ルールが未整備のまま進める:ベースアップ手当の新設等は、賃金規程や雇用契約との整合も要確認です。

実務のコツ:賃金改善額 > 評価料収入(見込み)」の関係を崩さないよう、 過去の診療実績・季節変動・職員構成(常勤/非常勤)を踏まえて、計画を保守的に作るのが安全です。

7. よくある質問(FAQ)

Q1. 外来・在宅ベースアップ評価料はパートやアルバイトも対象になりますか?

A. はい、対象になります。常勤・非常勤(パート)を問わず、対象職種であれば賃金改善の対象として含めることができます。

Q2. 評価料の収入が予想より少なかった場合、どうすればいいですか?

A. ルール上、原則として「賃金改善額 > 評価料収入」となる必要があります。収入見込み額は過去の診療実績に基づき慎重に計算し、計画書を作成することが重要です。

Q3. 従業員への説明(周知)は必要ですか?

A. はい、必須です。評価料の算定によって賃金改善が行われることについて、全職員に周知し理解を得ることが求められます。 就業規則や賃金規程の変更が必要な場合は、手続きも含めて整理しましょう。

まとめ:外来・在宅ベースアップ評価料で人材確保を

外来・在宅ベースアップ評価料は、診療所にとってスタッフの処遇を改善し、質の高い人材を確保・定着させるための重要な財源となります。 適切な計画策定と届出を行い、この制度を最大限に活用して、持続的な医院運営につなげましょう。

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